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  3. 豪農の屋敷を移築した 源泉かけ流しの秘湯 岐阜県関市・新明温泉
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長良川の鵜飼を見たことはありますか? 鵜匠はじつは国家公務員という立場で、古式漁法の文化を継承している。鵜飼にはなぜ多くの観光客が訪れ、人を感動させるだけの魅力があるのか。そのヒントは古民家を移築した秘湯の温泉宿にあった。
湯元 すぎ嶋
所在地:岐阜県関市板取4838
泉質:弱アルカリ性単純泉
源泉:37度
日帰り入浴:11:00~15:00(14:30最終受付)
入浴料金:大人(中学生以上)800円、子ども(4歳~小学生)400円
*食事をした場合:大人500円、子ども300円
TEL:0581-57-2532


使い込まれ、磨かれてケヤキの床は黒光りしている

150年前に建てられた豪農の屋敷を移築。重厚感のなかに温かみがある
長良川の鵜飼を見たことがありますか?  

薄暗い月明かりのもと、かがり火に照らされた水面から、魚をくわえた鵜が顔を出す。鵜匠は鵜ののど元にくくりつけた手綱を巧みに操り、食道まで飲み込んだ魚を吐き出させて素早く収穫する。

毎年5月中旬から10月中旬にかけて、岐阜市内の長良川では伝統装束に身を包んだ御料鵜飼が行われる。

御料鵜飼というのは、宮内庁管轄のもとで行われる皇室御用のための鵜飼のことで、獲れた魚は皇居などに献納される。

もう少し詳しく言うと、宮内庁の御料場で行われる鵜飼のうち、8回の漁を指している。

鵜飼になぜ宮内庁が関係してくるのか、不思議に思われるかもしれないが、全国で行われている鵜飼のうち、岐阜市の長良川鵜飼と関市の小瀬鵜飼の鵜匠は、宮内庁式部職の国家公務員なのだ。雅楽の演奏者と同じ扱いということになる。

現在、岐阜市長良には6人、関市小瀬には3人の鵜匠がおり、男子による世襲制となっているから興味深い。

宮内庁のホームページにも、この御料鵜飼についてきちんと触れてある。

1300年ほど前の律令時代には、すでに鵜匠が宮廷直属の官吏として漁をしていた記録があるほどで、皇室と鵜飼の結びつきは古い。

戦国時代には織田信長や徳川家康が鵜飼を見物し、獲れた鮎を珍重して鵜匠に俸禄を与えて保護してきた。
鵜飼漁で獲れる鮎は傷がつきにくく、飲み込まれたショックで気絶して鮮度が保持されるために、献上品としての価値が非常に高かったためだ。

明治維新になり、諸大名のバックアップが断絶して衰退したものの、明治23年より宮内庁が職員の身分を与え、長良川の3カ所を御料場に設置して、その伝統文化が継承されてきた。

鵜飼で生計を立てるというのは、今日では実際にむずかしいだろうが、この漁法は見ていてとてもおもしろい。
服装や装備も古式に則った物を使用しているところもいい。

こうした文化が遺されていることが誇らしい気持ちになる。文化継承のためには、国家公務員という保障があってもいいと思えてくるのだ。 


長良川を遡上していくと、美濃市の北で分岐し、北西方面の板取川という支流に分かれる。

今回の目的地は、その板取川がさらに分岐する地点までさかのぼったところにある、奥美濃の一軒宿をめざす。北の尾根を越えればもう福井県に入る山間の温泉地だ。

板取川は水質がよく、川下りや釣りが盛んに行われるアウトドアエリアだ。キャンプ場が多く点在していて、夏は名古屋方面からの観光客でにぎわいをみせる。

神明温泉の湯元すぎ嶋は、板取川の流域から少しはずれたところにある。

立派な門構えの玄関をくぐると、小さな村のとある豪農の屋敷に紛れ込んだかのような錯覚におちいる。


露天風呂へと続く竹林。少しの散策が露天風呂への期待感を高める


林の中の露天風呂。貸切露天風呂もすべて源泉かけ流しだ

写真:『温泉遺産』(実業之日本社刊)より
太い柱や梁が見事で、木の床は磨き抜かれて黒光りしている。
脳の奥底に刻み込まれた懐かしい記憶が呼び起され、次第に居心地がよくなってきた。

ロビーの太い梁や板張りの廊下はすべてケヤキだ。女将の話では越後の庄屋を移築したというだけあり、実用のなかに強い優美さがある。

本館の奥から下駄に履き換え、竹林を抜けて板張りの道を上がっていくと露天風呂が並ぶ湯屋へ到着する。ここは男女別の露天風呂のほか、貸切露天もふたつある。すべてが源泉かけ流し。  

源泉の温度がやや低めのため、湯に何も加えずに温度だけ上げてある。

やわらかく、なめらかなやさしい湯に、山の緑が溶け込むように映し出されている。  

肩に湯をかけまわしながら、濃い山の空気をゆっくりと深く吸い込んでみた。

時代を経ても変わらないもの。
ずっと残しておきたい、日本の記憶。

温泉も古民家も、鵜飼という漁法や鵜匠のたたずまいも、誰かが守らなければきっと消えてなくなってしまうだろう。
そして、一度消えてしまった文化や歴史を取り戻すことは容易なことではないのだ。

形を変えながら、現代に合うように変化しながらでもいい。
文化を継承し、持続させるからこそ、そこに価値が生じてくる。  

鵜飼が心を惹きつける“強さ”の源泉はどこにあるのか。
はからずも、人気の温泉宿がそのヒントを与えてくれたようだ。

長良川鵜飼の御料鵜飼の日程はすでに決まっている。
今年は6月20日(水)、28日(木)、7月10日(火)、24日(火)、31日(火)、8月8日(水)、22日(水)、30日(木)に行われる。
観覧船に乗ってその様子を見ることができるのだが、乗合船は出船時間が決まっており、18時45分と19時15分の2回しかない。鵜飼は20時30分頃に始まり、21時30分に終わる。
もっとも、観光のための納涼鵜飼も、夏休みの土曜日に開催されている。こちらは1日2回開催されるため、乗合船の出船も豊富だ。
乗合船はインターネットから予約できるので、そちらをどうぞ。
ぎふ長良川鵜飼 

名古屋方面からは、東海北陸自動車道・美濃ICより国道156号線を郡上八幡方面へ北上。美濃市内で長良川に架かる「新美濃橋」を渡る。県道81号線を洞戸方面、国道256号線を板取方面へ進み、県道52号線を経て左側。美濃ICより約60分。
高山・郡上八幡方面からは、東海北陸自動車道・郡上八幡ICより国道156号線を美濃市方面へ。国道256号線でタラガトンネルへ。県道52号線を板取方面に北上するとすぎ嶋へ至る。郡上八幡ICより約40分。
< PROFILE >
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。ブログ「デュアルライフプレス」
http://blog.duallifepress.com/
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