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お風呂はどんなときでも気持ちいいのだけど、やはり日本人なら温泉が格別。最近では“源泉かけ流し”でないとイヤとか、“白濁りの湯”がいいという、温泉の質にこだわる人も増えた。なかでも奇跡の湯と呼べるのが究極の上質湯“ぶくぶく自噴泉”。至福の温泉時間を体験してみてほしい!

低温泉でありながら、ジャクジーのように小さな泡が身体を包み、非常に心地いい奥蓼科温泉郷のぶくぶく自噴泉


なんとも豪快! 北海道屈斜路湖の湖畔にある男女別脱衣所をもつ露天風呂
現在、日本には4000か所にもなろうかという温泉地がある。数字が明確でないのは、火山国・日本は1000mを超えるボーリングをすれば、たいてい温泉が出るために、全国のあちらこちらで新しい温泉施設が生まれているからだ。

温泉施設にもさまざまなタイプがある。

まずは湯質が異なる。アルカリ性が強くてぬるぬるとした“美人の湯”と呼ばれる温泉。酸性が強くてぴりぴり感もあるのだが、石鹸いらずと呼ばれているような温泉。そのほか、無色無臭の温泉など、成分を細かく分類すれば日本には30以上の泉質がある。

次に湧出状態の違いも着目すべき点だ。自然湧出とは“地球の力”によって、自然に地表で湧くお湯だ。一方のボーリング温泉は人工掘削によって地下に眠る温泉を掘り当て、ポンプなどで汲み上げる方式をいう。

歴史ある温泉地は自然湧出のところが多いが、なかには自然湧出の温泉が枯渇し、ボーリングし直したところも目につく。

さらに湯船の形態も異なる。湯船の大きさを満たす十分な温泉湧出量があれば、源泉を引き入れ、そのままかけ流す“源泉かけ流し”になる。なかには適温で湧出されるために、加水も加温もしていない純度100%の湯船がある。

源泉温度が高い場合は加水して適温に、源泉温度が低ければ加温して温かくする(なかには独自の工夫で水を入れることなく適温にして純度100%を保っている温泉宿もある)。

湧出量のわりに大きな湯船のため、またはそのほかの事情で温泉を再利用するケースが循環形式の湯船で、この場合はろ過を行うことで衛生状態を保っている。

さて、こうしたなかで奇跡の湯が“ぶくぶく自噴泉”なのだ!

会津藩主が愛したぶくぶく自噴泉。大きなホテル内に、そのままの姿で残された(会津東山温泉)


湯底からはぬるめの湯、浴槽横の岩からは熱めの湯が湧く。それが混じって適温となる(甲子温泉)
「千年湯」という言葉がある。これは、開湯してから1000年以上の歳月が経つ温泉を指す。

これらの温泉の事始めを紐解けば、全国をまわって修行中の僧侶が発見したとか、鶴や熊などがキズを癒しているのを見つけて発見したなどの逸話が多い。全国に鶴の湯、鷺の湯、熊の湯が多いのはそんな理由だ。

もちろん、千年前にボーリング技術などないから、それらの温泉は自然湧出(地表に湯が湧き出ている)状態だった。

やがて、自然湧出温泉の周囲に湯小屋ができ、湯船ができる。

熱すぎる温泉はいったん冷ましてから湯船に湯を引き入れただろう。しかし、適温で湧く湯だったら、湧出口を囲むように円形あるいは四角形に石を積めば、そこがそのまま湯船になった。元々の温泉とは、こんなにシンプルだったのだ。

そして、その温泉は主に地域の人々の湯治の場になった。なかには藩侯の温泉として重宝されたところもある。

しかし、温泉事情が大きく変わるのは、昭和の高度成長期以降だ。レジャーブームが到来し、熱海は新婚旅行で賑わった。全国に大型温泉地ができた。

湧出口に造られた小さな湯船は不要となり、旅館やホテルに大浴場が完成した。ジャングル風呂やローマ風呂、50人以上入れるような大浴場が続々誕生した時代である。

これらのほとんどは“引き湯”だった。源泉からパイプで引かれていたり、共同タンクに貯められた温泉を引くことで湯船を満たした。

そして、いつの間にか湯底から泡と共に温泉が湧き出す“ぶくぶく自噴泉”は消えた。
現在、全国で残されている野湯、川湯を除く、脱衣所や湯小屋をもつ温泉施設はわずか80か所程度だろう。

ここは地獄。大露天風呂の湯底からは温泉と鉱泥が一緒に湧き出す。美容研究家注目の白い泥だ(別府紺屋地獄)


ぶくぶく自噴泉を訪ねて全国を旅して出版した究極の温泉ガイドブック『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』(山と溪谷社刊)
4月初旬から約1か月をかけて、九州から北海道まで“ぶくぶく自噴泉”をまわってきた。

インターネット情報や観光課、宿のホームページなどを調べても、なかなかはっきりしたデータは出てこない。
そこで、「ぶくぶく自噴泉がある」という噂を聞いたら行ってみることにした。

羽田から鹿児島空港に飛び、レンタカーで九州をまわって2日目の夜に博多の屋台で休息。翌日は新幹線で岡山に出て、それからレンタカーで山陰を2日間。さらに、岡山から和歌山の熊野三山をめぐって、南紀白浜空港から羽田へ戻るような過酷な旅だった。

こうして全国をめぐり、確認できたぶくぶく自噴泉はたったの58温泉地。残った大方の理由は、何代も続く経営者が「湯守」の魂を持ち合わせていたからだ。

「湯底で温泉が湧く貴重な湯船だから、絶対に手を付けるなと先代にきつく言われていたんです」と話す女将もいた。

お風呂はどんなものでも気持ちいい。温泉だって同じだ。でも、どうせ入るのなら源泉かけ流しの新鮮な温泉がいいと思っていた。しかし、ぶくぶく自噴泉の贅沢さ、心豊かになる湯は根底から温泉感を覆された。

実際、温泉成分は空気に触れると化学反応を起こすものも含まれるのだから、温泉は新鮮なほうがいい。湯底からぶくぶく湧く純度100%の温泉。なんと裕福なのだろう。その湯船が残った物語も湯の味わいになる。



ぶくぶく温泉紀行をまとめたガイドブックが7月下旬、山と溪谷社より『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』と題されて発売されます。今回のプレゼントも拙著(本名で執筆)にしました。興味のある方はアマゾンからぜひ購入ください。

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< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載
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