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一般に「写真は明るく!」と思って撮影しがちですが、「暗い部分をより暗くすること」で創り上げるプロのワザがあります。露出オート設定にマイナス設定を加えることで写真の雰囲気を変える。越カメラマンの講座は露出マイナス補正についてです!
 

皆さんは写真を撮る際、どのように露出を設定していますか?  
    多くの方はオート(プログラムオート、絞り優先オート、シャッター優先オート)設定を選択し、カメラが自動的に決めている数値に任せているのではないでしょうか。 
    最新のカメラは被写体の色の情報や明るさ(輝度差)を解析し、誰が見ても概ね適当と思える明るさに設定してくれます。 
    しかし「カメラが決めた露出」は、あくまでカメラが算定したもの。あなた自身がどんな明るさにしたかったかという撮影者の“意思”は加味されません。それを補うのが「露出補正機能」です。 
    露出補正には、明るくする“プラス補正”と暗くする“マイナス補正”があります。今回はマイナス補正について解説します。 
    
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    ところで、写真教室や撮影会などに行くと「ここはプラス補正ですか? マイナス補正ですか?」といった質問を受けます。それに対する私の答えは「分かりません」です。 
    しかし、それでは「無責任!」とお叱りを受けそうなので、私がどういった狙いでマイナス補正をしているのか、3つのパターンで紹介したいと思います。 
    それでは撮影した写真と共に見ていきましょう。 

紅葉の時期に咲く「四季桜」という珍しい桜を撮影しました。 
    自分なりに思い描いていた明るさは写真Aだったのですが、カメラでは写真Bのような明るさになりました。 
    補正をかけずに撮影したところ写真Bのようになったので、露出補正を「-1.3」段に設定し撮影しました。それが写真Aです。 
    デジカメであれば実際に撮影して1枚1枚明るさを確認しながら撮影できるので、補正は比較的楽に行えます。 



昔懐かしい木造の駅舎です。 
    明暗差の大きい被写体の場合、いくら優秀なカメラでも撮影者が明るいほうか、暗いほうか、どちらに露出を合わせたいのかの判断はできません。 
    写真Dのように窓の外の景色に明るさを合わせ、建物の中は暗くしようと思って撮影したのですが、カメラは写真Cのように明るく写してしまいました。 
    そこで写真Cに対して「-1.7」段補正して写真Dを撮影しました。 



上述したふたつの例からもお分かりの通り、カメラが算定する露出と撮影者自身が思い描く露出は必ずしも一致しません。 
    写真Eはカメラの算定露出(オート設定)そのまま、写真Fはナノハナの明るさを基準に撮影し、写真Gは太陽の明るさを基準にして撮影した例です。 
    どの明るさを選ぶのか。それは撮影者の狙い次第です。どれが正しくて、どれが間違っているというのもありません。どんな写真を撮影したいかという「意思」が肝要なのです。



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    とはいうものの、「それでは無責任だぁ!」と言われそうなので、どんなときに露出補正をするのか紹介したいと思います。今回はマイナス補正に関してアドバイスしましょう(プラス補正はまた別の回で)。 

陰になる部分が黒く締まるようにマイナス補正をする場合です。 
    カメラは画面全体を見た目に近い明るさで再現しようとします。そのため、本来日陰になるべき部分も明るくなってしまうことがあり、マイナス補正が有効です。写真H(±0)に対し、「-1.3」段補正したものが写真Iです。 
    陰の部分が黒くなり、全体にメリハリができました。 



カメラがハイライト(画面内の最も明るい部分)に合わせて、全体に明るめの露出にしてしまう場合があります。それが写真Jです。これはこれで美しいのですが、夕陽のムードは消えてしまっています。あえて補正をして臨場感や立体感を出してみるのもおもしろいものです。 
    ハイライト部分がきちんと再現できる程度の露出までマイナスに補正してあげましょう。カメラの算定した露出である写真Jに対し、「-2.0」段補正をしたものが写真Kです。夕日に染まるナノハナの雰囲気が再現できました。 



一般的に「ローキー」と呼ばれる表現手法です。 
    見た感じの明るさは、カメラの算定値である写真Lとほぼ一緒です。しかし、レンガ張りの建物のレトロ感を強調するため、あえて「-1.0」段補正したカットが写真Mです。 
    歴史的な重厚さが漂う雰囲気ある写真になりました。 



マイナス補正を活用することで、見た目とは違う印象を作り出したり(写真N)、たとえ小さな被写体であっても目を引くこと(写真O)が可能です。 
    プロの写真が引き立って見えるのは、このマイナス補正(暗めに露出を設定すること)を実践しているからです。 
    「写真は明るく、明るく」と思っている一般の方が多いのですが、逆に暗い部分を暗くして雰囲気を出す。これもひとつの手法です。ぜひ、挑戦してみてください。 


こし のぶゆき
1968年神奈川県生まれ。カメラ専門誌や旅雑誌の撮影・取材を行なう傍ら、「メルヘンステーション」をテーマに全国の駅を撮影し、雑誌などに作品を発表している。公益社団法人日本写真家協会会員、日本旅行写真家協会理事。
 


越カメラマンがマイナス補正による撮影方法を教えてくれました。 
筆者も取材などで伝統ある建物を訪れますが、いつも露出に悩んでいました。 
露出をオート設定にすれば室内はきれいに撮影できるのですが、くっきりし過ぎて“時の長さ”が表現できない…。 
内部と外の光の強さが違い過ぎて、越カメラマンも言っているように「どっちつかずの写真」になってしまう…。 
これからはマイナス補正を有効に使って雰囲気のある写真を撮りたいものです。 
さて、『国内旅行観光ガイド 名称・史跡☆百景』というウェブサイトがあります。 
おもしろいのは「100景検索」というコーナーで(実際には100景に足りない項目も多々ありますが…)、そこには城郭、神社・神宮、橋・吊橋、岬・燈台などのジャンルがあります。 
そのなかに「歴史的建造物」があり、筆者がかつて取材した「嘉穂劇場(福岡)」、「うだつの町並み(徳島)」、「野良時計(高知)」ほか多くの歴史的建造物が紹介されています。 
これらが光りと暗部のコントラストで撮影に悩んだ場所でした。 
みなさんはマイナス補正を上手に利用して、歴史的建造物で雰囲気ある写真に挑戦してみてください。 
●国内旅行観光ガイド「歴史的建造物・遺跡」 
    http://www.livedo.net/tabi/ken6.html
 


http://www.wbsj.org/inform/80th-photo-con/
2014年に創立80周年を迎える「日本野鳥の会」が主催する写真募集企画です。 
    秋に写真展「未来に残したい鳥風景」を開催するにあたって、全国の写真愛好家から、未来に残していきたい野鳥と野鳥のいる風景を募集、入選作品を写真展に飾り、多くの方々にご覧いただこうというものです。 
    日本野鳥の会のメンバーといえば、NHKの紅白歌合戦の活躍によって名前が広く知られましたが、日本の野鳥保護、野鳥の統計などと自然保護の観点からさまざまな活動をしています。 
    これまでの80年を振り返りながら、今後の野鳥保護への決意を新たにしていく機会にと企画された写真展なのです。 
応募受付期間:2014年4月4日(金)~2014年4月30日(水) 
    賞  品:優秀賞5点(賞金4万円)、入選25点(賞金1万円)ほか 
    発  表:2014年6月予定 
    写真展:2014年10月24日(金)~11月10日(月)キヤノンSタワー2F オープンギャラリー(品川駅)にて開催予定 
 
編集部が取材で出かけて撮影したたくさんの写真の中から、壁紙向きの写真をプレゼントします。お気に召されたら、壁紙などにお使いください。 
    
    ☆ 
    
    日本各地に取材に行くと、その一角に残された古い街並みと出合う機会が少なくありません。時間の流れがゆったりとしたその街並みは、ある世代には懐かしく、ある世代には新鮮で…。共通なのは、時に追われて生きている現実に気づくことです。 
構成と写真
岩崎幸則
東京都生まれ。雑誌編集などを経てカメラ&ライターになる。現在は旅行雑誌、企業会報誌などに執筆。プロレス観戦が趣味。


















