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  3. 絶景の里山の奥に出現する秘境の間欠泉露天風呂 山形県・広河原温泉
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日本で唯一、間欠泉の湯だまりに直接入れる温泉が山形県飯豊山の麓にある。安土桃山時代に発見された秘湯中の秘湯。細い林道を十数キロも走ったその先に、その間欠泉の温泉はご褒美のように姿を現す。


白河ダム湖畔。まるで北欧のよう。鉄塔のない大自然の風景が広がる

広河原温泉 湯ノ沢間欠泉 湯の華
所在地:山形県西置賜郡飯豊町大字広河原湯ノ沢448-2
TEL:050-5534-3431
●泉質:ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉
●源泉温度:33.1度
●湧出量:不明
●pH:6.8
●日帰り入浴:大人600円、子ども300円(10:00~:16:00)
※なお冬季は宿の営業はしていない。GWより営業開始



広河原温泉 湯の華の外観。林道の奥にぽつんと建つ一軒宿

混浴の露天風呂。1日に数度、間欠泉が見られる


間欠泉の噴出孔。地底から音とともにお湯が吹き上がる


男女別の内湯。加温してあるが源泉かけ流しだ


客室はこざっぱりしていて清潔。施設も新しい

単行本出版のため、湯底や浴槽の脇から直接湯が湧き出している「ぶくぶく自噴泉」を探している際、山形県に間欠泉に入れる温泉があるとの情報が入った。

その名は広河原温泉。

山形は自分の地元であり、目配せしていたつもりだが、そんな話は聞いたことがない。
間欠泉というならそれなりの規模で吹き出しているはずだし、ましてやその湯だまりに入れるならば話題にならないわけがない。
半信半疑だが、確かめるには実際に足を運んでみるしかないだろう。
ということで、急遽、温泉めぐりの日程に組み入れることにした。

地図で確認すると、広河原温泉の場所は山形県飯豊山北東の山懐。
福島、新潟との県境に近い。山形県は左を向いた人の顔の形をしているが、あごの下、のど元の位置に当たる。

高校時代、山岳部に所属していた私は、合宿で2度ほど飯豊連峰を縦走したことがある。
山形駅から最寄りの登山口まで行くのに、不確かだが、電車を2回乗り継ぎ、最寄駅からローカルバスを2度乗り換えてようやくたどり着く。そんな秘境だった記憶がある。

同じ山形県境にある朝日連峰が、急峻な峰が続き、頂に登ると一気に視界が開けて男らしいイメージがあるのと対照的に、飯豊連峰は山懐が深く、なだらかで、上り下りを繰り返しながら目的地に至る、女性的でたおやかなイメージがあったことを思い出した。

こうした約30年前のイメージは、温泉へのドライブの途中、再認識することになるのだった。

今回の取材行では、福島側から米沢を経て目的地に向かおうと思っていたのだが、なにせ情報が少なく、どこからアプローチしたらいいのか、肝心の温泉地の正確な場所がわからない。
カーナビでも表示されなかったため、宿に電話をして確認することにした。
すると、「白川ダム記念館」で検索してほしいとのこと。

米沢駅からは、県道233号線を西に向かい県道4号線に入るルートと、赤湯駅方面から向かう場合は、国道113号線から県道4号線を南下するルートがあることがわかった。

米沢側から、あえて県道の山道を選んでみることにした。
当面は白川ダム記念館を目標に、約30㎞のドライブだ。

ところどころに集落が現れるが、のどかな山里の風景が延々と続く。水が温んできたものの、田植えにはまだ早い。
この米沢からの県道4号線の選択が正しかったのか、途中、不安になってきた。山道が延々と続き、一向にたどり着く気配がない。
すると、突然道が舗装道路になり、目の前に白川湖畔の風景が飛び込んできた。

ここはいったい、どこだ。
小高い山々に囲まれた湖畔は、北欧を思わせるような、のどかな桃源郷が広がっているではないか。
思わず路肩にクルマを停めて、シャッターを切る。

小さなロッジが建ち並んでいることから、ここは整備されたキャンピング場であることがわかる。
あとで調べると、バイカーに人気の白川ダム湖岸公園だった。
サマーシーズンにはイベントも行なわれ、色とりどりのテントが彩りを添える人気のリゾートエリアになっている。

カーナビの目的地にたどり着いたところで、広河原温泉への誘導看板を見つけた。県道4号線を逸れ、林道に入っていく。この先、どのぐらい走るのだろう。

林道沿いに、地元の軽自動車がぽつりぽつりといくつも停車していた。ちょうど山菜の時期。この一帯は、山菜の宝庫として、地元の人に認知されているのだろう。

飯森山から白川ダムに注ぎ込む源流に向かって、林道は川をまたぎながら続いていくのだが、行けども行けども目的地が見えない。
林道に入ってから10㎞をゆうに超え、約1時間ほど走っただろうか。
ブナの原生林が広がる山懐に、存在感のある山荘が見えてきた。

ここが湯ノ沢間欠泉のある、広河原温泉だ。

建物はまだ新しく、平成17年10月に開業したという。
宿のご主人にじっくり話をうかがおうと思ったら、肝心の間欠泉はいつ吹き出すかわからないとのこと。
そこで間欠泉のある露天風呂を先に見せていただくことにして、噴出を待ちながら、その傍らでお話をうかがうことにした。

そもそもここは、知る人ぞ知る、秘境の野湯であった。
驚いたが、歴史はかなり古い。

安土桃山時代の天正年間(1573~1592)に、金の採掘者がぬる湯を発見。そのまま温泉として利用したのが始まりだという。
霊峰栂峰山の麓にある温泉として、明治から昭和初期にかけては湯小屋が建てられ、湯治場として栄えていた。
明治44年には内務省東京衛生試験所に湯の成分分析を依頼し、療養泉としてのお墨付きを得ていた記録が残っている。

この一帯は林業を生業とする地元民の中津川財産区が管理している。裏山はもとは金を産出していて、中津川村の村有林。湯ノ川をはさんで反対側が国有林になっている。
この湯ノ沢は至る所から湯が湧き出ているらしく、源泉かけ流しの内湯は、施設の上の湯(広河原温泉)を適温に沸かして注ぎ込んでいる。源泉は35.1度とぬるめだ。

そして肝心の間欠泉だが、こちらは元々、昭和35年頃、熱水を求めて掘削した名残なのだとご主人は語る。

将来の林業の行く末を考えたとき、山林からの収益では成り立たなくなることを見越して、掘削を試みた。
“300m~400mほど掘れば熱水が噴出するのではないか”
ところが、130mほど掘り進めたときに、炭酸ガスとともにぬる湯が噴出。これ以上掘ると吹き出さなくなるということから、資金不足のため、そのまま放置されたのだという。

宿の建設計画がスタートしたのは平成15年頃。そしてその2年後に宿が完成し、現在に至っている。

そこまで話が進んだとき、急に噴出孔から温泉が湧き出し始めた。
ぶしゅぶしゅという炭酸の音とともに、熱水が徐々に高く吹き上がっていく。

炭酸交じりのお湯の柱が次第に高くなっていく。
初めは30㎝ぐらい。
にわかにカメラマンに変身してシャッターを切りはじめると、タイミングよく2mほどの間欠泉ショーが始まった。

湧き始めから終了まで、約5分。
「ここで話をして正解でしたね。ごくたまに一度も見られないまま帰られるお客さんもいるんですよ」
ありがたい。なんという幸運なのだろう。ご主人の言葉が身にしみる。

浴槽は10分ほどの噴出で一杯になるが、上の泉源から引湯して常時不足を補っているのだという。
噴出する泉源は湯の華という名称で分析書が掲載されており、35度で吹き出し、浴槽は33.1度と低めになる。泉質は上の湯と同じだ。

話を聞き終えたところで、ようやく入浴タイムに入ることにした。
湯は茶色に濁っているようにも見えるが、手ですくうと無色透明で匂いや味はない。若干、旨味にも似た成分を舌で感じる。
酸・アルカリ特性は中性なので、ブナの原生林が生み出した酸素を吸いながら、ゆったりと長湯できる。

写真も撮り終え、空は青空。
あわよくば、もう一度、間欠泉を見られないものか。
内湯に入っていても、間欠泉が気になって落ち着いていられない。

結局、露天風呂に入って1時間以上待ち続けたものの、2度目を見ることはできなかった。
あれはまさに、貴重なタイミングだったのだ。

帰りがけ、ご主人がひとこと。
「今度はぜひ、ゆっくりいらしてください。夜のほうが噴出する回数が多く、ときには5m近く噴出することもありますから」

これ以上のセールストークはないだろう。
次は湯に入りながら間欠泉を激写してやる、と固く心に誓うのだった。


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白川ダム記念館までは、米沢駅方面からは、県道233号線を西へ向かい、国道121号線・八谷街道へ入り、右折して県道4号線へ。玉庭郵便局を左折してそのまま県道4号線で約30㎞、45分。
赤湯駅方面からは、国道113号線を西へ向かい、手ノ子で左折して県道4号線へ。白河湖沿いを走って約33㎞、45分。国道を走る赤湯からのルートのほうが道が整備されている。
白川ダム記念館からは、県道4号線を南下して、看板表示の林道を広河原地区方面へ。途中、分岐点を東沢方面に曲がる。約15.7㎞、50分。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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