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軽井沢から上信越自動車道・下仁田ICへの抜け道に、炭酸泉や食塩泉など数種の効能が期待できる濃度の高い温泉がある。穴場的な入浴施設だが、地元客や別荘族からの人気が高く、料理も安くておいしいと評判だ。
八千代温泉 芹の湯
所在地:群馬県甘楽郡下仁田町西野牧12809-1
TEL:0274-84-3812
●泉質:含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉
●源泉温度:10.8度
●pH:6.3
●営業時間:10:00~21:30
●入館料:大人500円、子ども300円
●定休日:木曜


内湯のひとつ岩風呂。浴槽の奥がかつての洗い場になっている、不思議な構造。現在の洗い場は浴槽手前にある


源泉は無色透明。浴槽に注がれると薄い茶褐色に見える

玄関を入るとチェアが並んだロビーがある。右手に大広間があって、食事処になっている


芹の湯外観。クルマは建物の裏側に回り込むように入って停車できる


西野牧地区の田園風景。夕日に照らされるととくに美しい


私が東京の借家と軽井沢の別宅を行ったり来たりする生活をはじめて、もう7年になる。 

仕事のベースはあくまで東京で、どうしても離れて暮らすわけにはいかないが、少し時間ができると深夜にクルマを飛ばし、自然に囲まれた我が別宅へと向かう。 

都内のマンションを購入するほどの予算はなく、かといって住居にこだわりがないわけではない。
その解決策として選択したのが、二地域居住(デュアルライフ)という方法だった。 

最近はこうした二地域居住をする人が増えているようで、週末に田舎で野菜作りに励む中高年や若いファミリーなどが新聞や雑誌で取り上げられるようになった。 

最大の利点は、気分をリセットできることだろうか。
仕事や人間関係で行き詰まっているとき、東京の自宅に帰るとどうしても閉塞感を抱えてしまう。ふだんから家の中をきれいに整頓していないので、疲れて帰って散らかった部屋を見るとげんなりする。

我が家がもう一軒あると思えばこそ、逃げ場があるような気がして心が楽になる。
片道約2時間のドライブだが、最近は慣れて、夜道でもまったく苦にならなくなってきた。 

軽井沢は人気の観光地だが、お盆やゴールデンウィークをはずせば、いたって静かで人通りも少ない。
しかしそれでも高速道路が渋滞することがある。
軽井沢で遊んだ帰り、上信越自動車道の碓氷軽井沢ICに正攻法で直行すると、料金所の前後で思わぬ渋滞に巻き込まれることがある。そんな時は国道18号線を選択し、松井田妙義ICや富岡ICに回り込むことも少なくなかった。 

2、3年前、国道18号を通らずに下仁田ICへ抜けるもうひとつの裏道の存在に気づいた。
しかも国道18号線よりも距離がかなり短い。
最近はもっぱらそちらのルートを通るようにしている。 

軽井沢から下仁田に向かう際、国道18号線は妙義山の北側を大きくふくらんで回避するルートだ。
しかし、妙義山の西側を南下する県道43号線を通ると、山を下って下仁田に最短距離で向かうことができる。しかも山道だけでなく、合流する国道254号線も信号機が少ないので、すこぶる走りやすい。
県道43号線がかなりの急勾配のため、山道に慣れていない私は雨の日や夜の通行は控えるようにしているが、陽が高い時間に帰る場合はこちらを選んでしまう。 

走りやすさのほかにも、この道を選択する理由がある。

山を下りきってからの里山の風景や雰囲気が、なんとものどかで、走っていて気持ちがいいのだ。いつも山間の西野牧地区の田園風景に癒されながら、とくに夕暮れ時は自分のお気に入りポイントになっている。 

この軽井沢から国道254号線に合流する本宿までの区間は「姫街道もみじライン」という。

江戸時代には中山道の脇往還として利用され、女性でも歩きやすいことから「姫街道」と呼ばれていた。
上州姫街道は本庄宿(埼玉県本庄市)から藤岡宿(群馬県藤岡市)、富岡宿(富岡市)を経て、借宿(長野県軽井沢町)へと抜けるルート。
本宿宿(群馬県下仁田町)から初鳥屋宿(下仁田町)を経て鰐坂峠を越え、借宿で中山道へと戻る。

街道としても由緒あることはあとで知ったが、この道を選ぶもうひとつの理由が、驚くべき泉質の日帰り湯の存在だ。

山を下りほっとして走っていると、まもなく左手に「八千代温泉芹の湯」という看板が見えてくる。
表示にしたがって左折して川を渡り、今度は渓流に沿って一本道を上がっていく。
するとほどなく“姫街道の隠れ湯”が姿を表す。 

最初看板を見たとき、この温泉は竹下内閣のふるさと創生基金の1億円を原資に掘削された温泉施設なのか、と推測していた。それだけ看板が立派で、行政が立てたものかと思ったからだ。

ところが実際に来てみると、古めかしい木造の民宿のような佇まいになっている。
しかも源泉かけ流しだという。
期待がふくらんだのは言うまでもない。

玄関で料金を支払うと、ソファの並んだロビーを抜けてさっそく風呂に向かった。
脱衣所の先に見えたのは、透明な湯を湛えた茶褐色の浴槽。

入浴して驚いた。
強アルカリ性かと思うほどのぬるぬる感で、なめると海水のようにしょっぱい。
東京や海に近い温泉では珍しくないが、ここは上州の山の中。
食塩泉とは意外だった。
しかも肌にまとわりつくような炭酸の気泡も少し感じられる。 

入浴後に温泉分析書で泉質を確認すると、pH6.3の中性で、含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉。
なんと、源泉10.8度の鉱泉だった。つまり沸かし湯の源泉かけ流しなのだ。

ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉というと、いまは営業を停止してしまった北海道・ニセコ薬師温泉や、秋田・乳頭温泉郷の鶴の湯が挙げられる。
ただ、鶴の湯でもここまでの塩気は感じられなかった。
また、「美人の湯」のようなぬめりは、炭酸水素塩泉にみられる重曹成分によるとみられる。
沸かしているために炭酸成分が抜けてしまっているが、源泉はもっと炭酸も強いのではないか。

二酸化炭素泉の血液循環作用、塩化物泉の保温効果、炭酸水素塩泉の肌のすべすべ効果、さらに豊富なホウ酸による殺菌力など、とにかく“濃い”鉱泉であることは、入浴すればよくわかる。

女将の話によると、ここに嫁いできた時にはすでに入浴施設として営業されていて、現在通っている常連の98歳のおばあさんも「若い娘のときに入浴した記憶がある」とのこと。
ただ、一時は営業を停止していたという。
平成15年になって再び日帰り入浴を開始し、23年に改装していまの施設になった。

男女別の内湯は日によって左右が入れ替わり、左側が石組み、右側が木製の浴槽になっている。

沸かし湯とはいえ、これはまぎれもない名湯だ。
見落としそうな日帰り施設にもいい湯はあるのだと、温泉の奥深さを改めて感じた。

ちなみに、入浴後は広いお座敷でのんびりすることができ、地粉自家製麺の釜揚げうどんや源泉豆腐、ニジマスのフライに秘伝タレをからませたマス重など、ご当地の雰囲気を堪能できる食べ物も充実している。

軽井沢からの帰り、立ち寄り入浴が楽しくなる、隠れた名店を発見した気分になった。

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上信越自動車道・下仁田ICからは20.8㎞、約30分。国道254号線から県道43号線に入って約6㎞。西野牧地区の看板で右折。下仁田からだと右手の看板を見落としやすいので注意。 碓氷軽井沢ICからは約9㎞、20分。ICを出てすぐの交差点を左折。県道43号線との合流地点で下仁田方面へ左折。勾配のきつい山道なので、荒天時や夜間は避けたほうが無難。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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