1. Smart Accessトップ
  2. おでかけマガジン(+バックナンバー)
  3. 夏はうなぎ、冬はとらふぐ 季節を味わう浜名湖観光の基点 静岡・浜名湖かんざんじ温泉
「Smart Access」おでかけマガジン 毎月2回、「Smart Access」会員のみなさまへ、旬のドライブ&スポット情報をお届けします。
トップページへ戻る


かんざんじ温泉は浜名湖周辺観光の基点。温泉以外にもうなぎ、天然とらふぐ、大ぶりな牡蠣など、季節によって堪能できるご当地自慢の味がもうひとつの大きな魅力だ。
浜名湖かんざんじ温泉 時わすれ開花亭
所在地:静岡県浜松市西区舘山寺町412
●泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物強温泉(舘山寺第4温泉源)
●源泉温度:33.7度
●pH:7.4
●湧出量:171?/分
TEL:053-487-0208


浜名湖の支湖、猪鼻湖湖口にある景勝地の瀬戸。浜名湖は海のように雄大な景色が広がる


「時わすれ開華亭」開華の湯の露天風呂。このほかサウナ、ジャクジーやレインボー風呂など趣向を凝らした浴槽がある

遠州灘天然とらふぐ料理はてっさやふぐ鍋、鮨など盛りだくさんのふぐ尽くし

かんざんじ温泉街にある「松の家」の牡蠣カバ丼1620円。甘辛だれは牡蠣にも合う!

温泉名の由来となった曹洞宗秋葉山舘山寺。急な階段を上った小高い丘にある


日本の昔ばなしには、ダイダラボッチという巨人があちらこちらで登場する。

民俗学者の柳田國男も日本全国の伝承を集めて考察しており、『ダイダラ坊の足跡』という小編にまとめている。(1972年〈昭和2年4月〉『中央公論』)

甲州街道・笹塚の近くの代田橋は、大多ぼっち(だいたぼっち)が架けたという言い伝えがある。これは江戸時代前期に出版された仮名草子『紫の一本(ひともと)』に記載されている。
代田橋の近くには、約180mの右片足の形状をした窪地があり(現在の下北沢小学校付近)、これが村名代田の由来となっているのだという。残念ながら、橋も窪地も、いまは跡形もない。

伝承には諸説あるが、ダイダラボッチの体躯の大きさは、山に腰かけ、手をついてくぼみができれば湖になるほど。

近江の土を掘って富士山を作り、その掘った跡地が琵琶湖となった。
出羽の羽黒山に腰かけて鬼怒川で足を洗った。
富士山と筑波山を天秤棒にかけて持ち上げると、筑波山のほうが持ち上がり、結わえていた弦が切れて筑波山が地上に落ちたため、峰が2つに割れてしまった。

こうした話が各地でみられるのだ。

天地創造にまでさかのぼるような壮大な話ではある。
作家の高橋克彦は、『竜の柩(ひつぎ)』という作品中で、ダイダラボッチと宇宙人とのかかわりを匂わせながら、主人公の推測という形を借りてこう記している。

<もっとも、虹人はダイダラボッチ伝説を古くから宇宙人と関連させて考えていた。冶金技術を持った宇宙人たちにとって、大切なものは鉱物を溶かすタタラの建設であった。そのタタラが変化してダイダラボッチになったと見做していたのである。今でもそうだが、鉱山は深い山奥にある。ダイダラボッチ伝説もまた、著名な鉱山の分布と重なっているのだ。それに鉱山技術者たちの信奉する目一つ神の存在もあった。肉体的特徴と分布の一致を考えれば、目一つ神がダイダラボッチとおなじと見て間違いないだろう。>(『竜の柩4約束の地編』p225・講談社文庫)

東は秋田県から西は滋賀県にかけて、ダイダラボッチという名称に似た伝承は残されているようで、とくに関東や富士山周辺に多く集まっている。

静岡にある浜名湖も、ダイダラボッチが砂浜についた手形からできたという言い伝えがある。

静岡県が運営する文化資源ホームページにこの大男の伝承が掲載されている。
浜名湖のあたりの部分だけ、引用してみたい。

<引馬野の馬舟(現:浜松市中区富塚町)辺りにこんこんと湧き出る泉がありました。だいだらぼっちは、遠州灘に足を突っ込み右手で植わっていた杉をなぎ倒し、左手は海岸に付かがみ、水を飲みました。すると砂浜に左手がめり込み、手形のような湖ができました。それが後の浜名湖になったとか。
握り飯を口に入れると、小石が歯に当たりそれを吐き出すと、浜名湖に落ち小さな島になり、それが礫島(つぶてじま)になりました。
やがて、朝日が昇ると富士山は七色に輝き、秋葉山は富士山の影になってしまいました。
それを見て怒っただいだらぼっちは、土の入ったぼっちをなげました。その土が落ちて、舘山寺の大草山に、地団太を踏んだ場所が三方原台地になったそうな。>

話はけっこう入り組んでいて、ディテールまで表現されている。

握り飯というからには、それなりに時間を経てからの創作話だと思われる。
それでもこの大男は、庶民に愛される存在として、地域創生譚に名前を刻むのだ。

浜名湖だけでなく、礫島にしろ大草山(おおくさやま)にしろ、いまも観光地として地元の人々にはよく知られた場所だ。

礫島は浜名湖で唯一の島で、湖の西北、三ヶ日町大崎半島から400mほど沖に出た場所にある。
礫島に渡る船はもうなく、1617年(元和3年)開創とされる礫島神社がひっそりと建っている。

大草山は舘山寺ロープウェイの山頂駅。
浜名湖の北東に位置し、舘山寺の温泉街からロープウェイに乗れば、内浦を眼下に渡って、海に突き出た大草山展望台へと足を運ぶことができる。

このあたりは浜名湖観光の基点だ。
観光施設が集中し、浜名湖かんざんじ温泉には14軒の旅館・ホテルが軒を連ねる。

名前の由来となった舘山寺は、曹洞宗の禅寺。
810年(弘仁元年)、弘法大師空海が舘山を訪れた際にこの地で修業し、開創されたと伝えられている。

その寺の名前を冠したかんざんじ温泉の開湯は、1958年(昭和33年)と比較的新しい。
1953年(昭和28年)に舘山寺観光協会が設立され、掘削によって塩気のある温泉を掘り当てた。

源泉の塩分濃度を見れば、有馬温泉(兵庫)は不動のトップで揺るがないにしても、黄金崎不老ふ死温泉(青森)に次いで塩分濃度が高い温泉としてランキングされているケースがある。
しかし、温泉通に向けた記事であればこそ、この順位を簡単に鵜呑みにすることはできない。
かんざんじ温泉で源泉がどのように利用されているか、きちんと触れておかなければならないだろう。

現在の源泉は、日帰り温浴施設「華咲の湯」の舘山寺第4温泉源から各宿が引湯するかたちで利用されている。
源泉は共同管理。
温泉分析書にある泉源の成分総計は22.77g/kgで、確かに高い値ではある。
だが、筆頭有馬温泉天神源泉の62.1g/kgと比較すると、このほかにも高濃度の温泉はいくつか名乗りを上げてきそうな雰囲気が漂う。

しかも、かんざんじ温泉では、塩分濃度が高めであることと源泉温度が33.7度と低めであるために、加水して塩分濃度を調整し、各宿が加温して循環利用しているのが現状だ。循環する際には消毒のための塩素を加えている場合もある。
取材時にはこの温泉地で、いわゆる源泉かけ流しの浴槽を見つけることができず、少々残念な思いをした。

テレビ番組などでランキングを表示して強塩泉をうたっているだけに、温泉通にとっては、期待を裏切られる結果になってしまうのは事実だろう。
できればなんらか形で、高濃度でピュアな塩泉の浴槽を実現してもらいたいものだ。

さて、循環湯と割り切ってしまえば、景観や食事など、その他のサービスで受けられる印象が、宿の良し悪しを決める基準となる。

浜名湖名物といえば、やっぱり食べておきたいのがうなぎ。
かんざんじ温泉から東の浜松にかけて、うなぎの専門店や和食処は約40軒にものぼる。
通年食べられるが、うなぎはどうしても夏のスタミナ源というイメージが強い。

寒い時期の名物はないものかと、宿の大将や女将たちが目をつけたのが「天然のとらふぐ」だ。
10月になると、遠州灘の天然とらふぐが解禁。
かんざんじ温泉の9つの宿が、お手頃な値段で天然とらふぐ料理を提供する宿泊プランを提案している。
かんざんじ温泉で食べられる遠州灘の天然とらふぐは、ほんのりした甘みとほどよい弾力が特徴。2月末までの5か月間だけ楽しめる新名物になっている。

そしてご当地メニューがもう一品。
11月上旬から3月中旬まで、浜名湖周辺の15店舗で「牡蠣カバ丼」が登場する。
浜名湖で獲れたばかりのぷりぷり肉厚の牡蠣を、うなぎ蒲焼の甘辛だれにからめ、白ネギか玉ねぎとともに海苔を散らした丼ご飯に乗せれば完成。
びっくりするのは使われる牡蠣の大きさ。
火を通しているのに、一口ではほおばり切れないほど大きい。
栄養豊富な浜名湖で育った牡蠣は、3、4個でごはんが見えなくなるほど。臭みはまったくなく、ひと味もふた味も違う。

温泉だけでなく、味覚でも至福の時が味わえる浜名湖の豊かさを、ひしひしと感じた。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

東京方面の東名自動車道・浜松西ICから浜名湖かんざんじ温泉までは県道48号線を経て約8㎞、15分。名古屋方面の東名自動車道・三ケ日ICからは国道362号線に入り、浜名湖北岸を迂回するように走って県道320号線へ。約15㎞、25分。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
  • スポット特集
  • B級グルメ特集
  • オートキャンプ特集
  • レジャー&リゾート特集
  • ロケ地特集
  • 絶景特集
  • 子供といっしょにお出かけ特集
  • 特産品・名産品特集
  • 温泉・スパ特集