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神奈川県丹沢山地の南東の端に、三角形をした美しい大山(おおやま・1252m)がある。山腹までケーブルカーが走っており、日帰りで気軽にハイキングを楽しむことができる。丹沢山地に降る雨は、伏流水となって周辺に湧水をもたらす。広沢寺温泉は、こうした鉱水を利用した、強アルカリ性の美人の湯だ。

大山ケーブル駅。阿夫利神社下社まで6分。歩きだと30~40分かかる

阿夫利神社下社拝殿。右側に神泉を汲みに行ける入口がある

大山名水のご霊泉。山内でただ一カ所の水源から引水している

下社前からの眺望。視界がいいと三浦半島の先の房総半島まで望める

廣澤寺温泉 玉翠楼
●住所:神奈川県厚木市七沢2607
●日帰り入浴:11:00~16:00(土日祝~17:00)/大人1000円、小学生700円、幼児500円
●泉質:(温泉法が定める「温泉」に該当せず)
●泉温:24度
●pH:10.3
●湧出量:不明
TEL:046-248-0011

大沢川渓流に佇む一軒宿、玉翠楼。純和風の温泉宿

男湯の露天風呂「渓流岩風呂」。無味無臭で肌がすべすべになる。泉源は敷地の奥、川の近くにある


東名高速道・厚木ICの近くに、ケーブルカーで行く神社があると聞いて興味を覚えた。
大山(おおやま)のケーブルカーに乗ると、標高700mの阿夫利(あふり)神社まで一気にたどり着けるらしい。
近くには廣澤寺温泉もある。
日帰りだが、泊りがけの旅行気分でいそいそと出かけた。

国道246号から県道611号に入り、里山の風景を眺めながら山に分け入るようにクルマを走らせると、ケーブルカー乗り場の表示と駐車場が見えてきた。ここでクルマを停めて、あとは歩いて上がれということらしい。

少し歩くと「一般車両乗入はご遠慮ください」という看板があった。
コマ参道と呼ばれる歩行者用の階段を、ずうっと上っていく。
左右に土産物屋や食事処が並んでいる。木地師と呼ばれるコマ挽き職人が店を構えていたことから、コマ参道と呼ばれるようになった。
けっこうな急勾配だが、物見遊山であちらこちら、眺めながら歩くのは楽しい。

15分ほどで大山ケーブル駅に到着した。
大山は標高1252mだが、途中駅の大山寺を経由し、中腹にある700mの終点阿夫利神社駅まで、ケーブルカーで6分かけて上っていくことができる。往復1100円。
9時から16時半(土日祝は17時)まで、20分間隔で運行しており、少し待つと緑色の電車がやってきた。
勾配に合わせ、車体も菱形にゆがんでいる。前の席との落差がけっこうあって、いかに斜面の傾斜がきついかわかる。

大山は雨降山(あめふりやま)とも呼ばれ、水や山野の幸を恵んでくれる神の山として地元の人々に崇められてきた。阿夫利神社の「あふり」も、あめふりが転じたという説もある。
山頂からは祭祀に使用したと考えられる縄文時代(紀元前1000年頃)の土器片が出土している。いかに古くから信仰されてきたか、その証拠といえよう。
阿夫利神社の創建は2200余年前。記紀が編纂された時代をはるかにさかのぼり、地元に密着した山の神を祀っている。御祭神は、大山祇神(おおやまずみのかみ)、高?神(たかおがみのかみ)、大雷神(おおいかずちのかみ)の三柱。ケーブルカー終点にあるのは下社で、本社は山頂にある。

この日は山登りの準備もしておらず、さすがに山頂への登山は控えることにした。
だが、それでも下社から見る眺望はすばらしく、平塚や伊勢原などの市街地の向こうに、江の島や三浦半島がきれいに見渡せた。
丹沢山塊東端の独立峰なので、海上から羅針盤代わりの目印となり、海洋の守り神とされたのもうなずける。
山頂から見下ろす風景は、さぞや美しいことだろう。

下社の拝殿脇に、トンネルのような入口があり、そこから奥に進むと神泉の水くみ場があった。なかなかおもしろい構造だ。
空のペットボトルを購入して、ありがたく水をちょうだいした。これは家でコーヒーを淹れる時に使うことにしよう。

帰りにはコマ参道にある宿坊に入り、豆腐料理を楽しむことにした。
大山の名水をベースとしているだけあって、大豆の濃厚なうまさが舌にまとわりつき、香りが鼻に抜けていった。

さて、大山めぐりで軽く歩いたので、温泉で汗を流すことにしよう。
大山を下り、山麓を北に回り込むように走ると、廣澤寺温泉がある。
玉翠楼は一軒宿。日帰り入浴もできる。
唐破風の瓦屋根が印象的な玄関は、古き良き日本の旅館といった趣きがある。
創業は昭和初期。
玄関ロビー脇に昆虫展示室なる資料室があった。丹沢の昆虫標本のほか、シカの剥製や真空管蓄音機などが飾ってある。
見上げると、壁に木造の大きな家屋の骨格がわかる写真が掲げてあった。「上棟昭和5年」と文字が添えてある。80余年の歴史を持つ宿というわけだ。

この付近の温泉地は七沢温泉郷と呼ばれ、どこも源泉温度が低く、かつては冷鉱泉と呼ばれた部類になる。
現在の温泉法では、温泉源の温度が摂氏25度以上あるか、湯の含有物質が一定の含有量以上になっているものしか温泉と認められていない。
廣澤寺温泉の源泉は24度でわずかに温度が低く、成分も基準を満たしていないため、厳密には温泉と認められていない。
しかし、人々が廣澤寺温泉を評価する理由は、湯上り後に肌がすべすべするのを、実際に体感しているからだ。
pH10.3という強アルカリ性の源泉を、加水せずに沸かして使用している。

中庭の日本庭園テラスを抜けて向かった先は、丹沢の渓流をイメージして岩を組み上げた半露天風呂。イノシシの彫像がご愛敬だ。
都心の喧騒を抜け出してくるには最適だ。
自然を十分堪能でき、旅の風情を満喫することができた。

女湯の露天風呂は、樹齢2000年の古代檜に、漆を幾重にも塗り重ねた総漆塗りの浴槽。
温泉地で漆塗りの浴槽というのもとても珍しく、これはこれで一見の価値ありだ。

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東名高速道・厚木ICから西へ進み、国道246号を左折。板戸交差点を右折して県道611号に入る。13㎞、40分。ケーブルカー乗り場の下、こま参道入口に駐車場があり、そこからは徒歩で階段を上っていかなければならない。歩行が困難な人には少し厳しいかも。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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