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晩秋を迎える長野県・安曇野。北アルプスの山麓に位置し、きれいな湧き水と、温泉、加えて今日ではさまざまな美術館が点在する街として人気を博しています。それほど雪深い土地でもないので、空いている時期に訪れるのもいいかもしれません。
常念坊に残された野口さんのサイン

湧き水によって栽培されるわさび

安曇野ちひろ美術館

常念坊の湯。内湯と露天がある

山小屋の雰囲気がある常念坊

穂高温泉郷 常念坊
●住所:長野県安曇野市有明2186-201
●泉質:アルカリ性単純温泉、pH8.5
●源泉温度:75.4度(有明厚生温泉源泉と有明荘源泉から引湯)
●宿泊1泊2食1万円~(日帰り:10時~20時、おとな500円)
TEL:0263-83-4984


冒険カメラマンとして活躍していた野口悦男さんは、その豊富な温泉旅行経験を活かして、テレビ番組などでいつしか温泉解説や秘湯の旅を推奨するようになった。
冒険カメラマンというより「温泉達人」の称号が似合うようになったのは、1970年代からだと思う。
その後、タオルを頭に巻いて入湯し、温泉解説をする姿は、すっかりお茶の間でおなじみになった。

同時に温泉を紹介するだけではなく、日本の貴重な天然資源である温泉を後生に残す運動も始めている。
「温泉遺産を守る会」は、それを目的に結成された会だった。循環ろ過をしない源泉かけ流しの湯、湯守と旅籠のマインドがある宿、そして木造三階建ての温泉宿といった文化的価値のある宿。さらに温泉栽培や地熱を使った産業などを「温泉遺産」に認定し、後生に残そうとしたのだ。

筆者は「温泉遺産を守る会」のPR担当に任命され、2003年に実業之日本社より刊行された『温泉遺産』のディレクターも務め、執筆にも関わった。

その時に、青森、秋田、山形といった東北の山間の温泉から九州の温泉まで、野口さんとふたり旅をした。
地球の恩恵である源泉かけ流しの温泉に入湯し、自慢の食事を楽しみ、宿の大将や女将と酒を飲み交わしながらさまざまな話をした。
その経験は、後に筆者が温泉や旅の本に執筆する時の土台になっている。

温泉遺産に認定した宿には「温泉遺産認定の宿」のステッカーを配布した。
今でも源泉かけ流しの湯船を訪れると、もう10年以上前に配布したステッカーを貼り続けてくれている宿がある。

穂高温泉郷の温泉宿「常念坊」もそんな宿の一つである。

けっして大きな宿ではないが、山小屋風の玄関を入って浴室に向かう廊下に設置された飾り棚の中に、今でも野口さんが訪れた時の写真と色紙、それにステッカーが飾られていた。
筆者もこの時、野口さんと一緒に常念坊を訪ねていた。

穂高温泉郷は松本から白馬方面へと続くJR大糸線の穂高駅からすぐ。常念岳の裾野の森林の中に位置する。長野自動車道安曇野ICからもアクセスのいい温泉郷だ。

北アルプスの眺望と、北アルプスが生み出す豊富な湧き水と、温泉に恵まれた地でもある。
開拓100年を迎えた世界最大の面積を誇るわさび田をもつ「大王わさび農場」も、安曇野の美しい湧き水がなければ発展しなかっただろう。

また、穂高・安曇野は美術館が点在するところだ。
「安曇野アートライン」と呼ばれる道の周囲には、安曇野市豊科近代美術館、田淵行男記念館、安曇野ジャンセン美術館、安曇野アートヒルズミュージアムなどの19ものアート関連の施設がある。

たとえば、安曇野ちひろ美術館は、1997年に絵本画家いわさきちひろの美術館としてオープンした。信州はちひろの両親の出身地でもあり、第二次世界大戦後に開拓農民として暮らしたところでもある。それが縁で、関わりのある土地に美術館が造られた。

これだけの観光スポットがあるだけに、春から秋にかけては安曇野は観光客で溢れる。大王わさび農場には大型観光バスが何台も並び、安曇野ちひろ美術館も警備員が整理をしないと駐車がうまくいかないくらいになる。
しかし、冬となると事情は異なる。白馬方面にスキーヤーやスノーボーダーがでかける時の通過地となってしまうのだ。
もちろん、極寒の時期には安曇野ちひろ美術館をはじめ、長期休暇となる施設もある。しかし、初冬や初春は静かな安曇野を訪れるチャンスでもあるのだ。

安曇野観光のベースになるのが穂高温泉郷である。
先に紹介した常念坊は経営者が山岳ガイドであり、救助隊隊員としても長年北アルプスで活躍してきた。
そのために、山歩きはお手の物。夕食に珍しい季節の山菜が並ぶ。高山にしか生えない貴重なキノコが食卓を飾ることもある。

温泉はナトリウムイオンを多く含んだアルカリ性。ややぬるりとした心地いい肌触りで、長湯ができる。湯上がりにぴりぴりとすることもない。

有明厚生温泉源泉と有明荘源泉からの引湯ではあるが、75.4度の源泉は引かれるうちに適温となるために、加水なしの源泉100%に入浴できる。

一部循環殺菌も行っているが、基本的に源泉かけ流し。
「ほかより入りやすい料金だし、お湯がいい」と、近隣の人たちも大型温泉ホテルではなく、小さな常念坊に通うほどなのだ。
常念坊では近年「湯治プラン」も設け、低予算で温泉三昧できる企画を立ち上げ、これも好評を得ているそうだ。

アートが点在する美しい森の中の温泉へ。
ぜひ、のんびりと穂高・安曇野で過ごすために訪れてほしい。

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首都圏および名阪神地区からは中央自動車道経由長野自動車道利用で安曇野ICから穂高を経て穂高温泉郷まで約30分。
< PROFILE >
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』『ぶくぶく自噴泉めぐり 改訂新版』を上梓。旅雑誌などに連載中。
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