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  3. 湯船を白く“塗装”するマイルドな湯【長野・白骨温泉】
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長野県と岐阜県の県境エリアは自然豊かな場所です。たとえば、山と川の景観が素晴らしい上高地は、自然を守るために自家用車の乗り入れが禁じられています。上高地の手前の森林の中にあるのが白骨温泉です。ここには素晴らしい湯が待っています。
白骨温泉から近い上高地

森の中に宿泊施設が点在する


空気に触れて白く染まった温泉

湧き出してすぐはまだ透明に近い
※写真協力:長野県観光機構

白骨温泉
●住所:長野県松本市安曇4197-16
●泉質(以下一例):カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉 pH:7.0
●源泉温度:42.6度
●宿泊:観光案内所HPに掲載される11軒の宿でさまざまなプランを展開
●日帰り:8軒の宿で実施、大人500円~(宿ごとに受け入れ時間は異なる)
TEL:0263-93-3251
【温泉むすめ情報】
温泉むすめ 白骨朋依(しらほねともえ)
骨をモチーフにしたアクセを身につけているパンキッシュなむすめ。過激な発言も多いが、実は心優しい少女。地元の温泉水を常備していて飲泉してテンションをあげる。


乗鞍岳の山麓、標高1400mの森の中にあるのが白骨温泉だ。
白骨温泉には草津温泉や熱海温泉のような、いわゆる「温泉街」は見当たらない。森の中の傾斜地や川沿いに宿があり、スイスに見られる木立の中や川沿いにシャレーが点在するリゾート地の趣きなのである。
乗鞍岳や槍ヶ岳、穂高などの日本を代表する名山が周囲にそびえる。これらの地には高山植物が咲き、野鳥が飛び、野生動物が闊歩する。白骨温泉もまた、同様に自然豊かな場所だ。



余談になるが、上高地も乗鞍岳の山頂までの道路も一般車の出入りが禁止されている。訪れた人は山麓のターミナルにクルマを置いて、上高地や乗鞍岳に向かうのだが、これも美しい自然を保護するための処置である。
白骨温泉をベース基地にして、日中は乗鞍岳や上高地にシャトルバスででかける人も少なくない。



白骨温泉は、230年ほど前の文献では「白船温泉」と記載されている。「温泉が湯船を白く染めるから…」という説が有力だが、実際にその通りだから、この説にうなずける。
ただし、明治時代になると「白骨」の文字が当てられるようになる。白くなった湯船などの木材が、骨を連想させるということらしいのだが、それもまた合点がいくのだ。さらに、白骨の名を定着させたのは、大正時代の長編小説『大菩薩峠』の中に「白骨の巻」という物語があり、ここをモデルにしたからである。
こうして、白船温泉はいつしか白骨温泉となった。



こう書き進めてくると、「白骨温泉=白い湯が湧く」と思ってしまいがちだ。
事実は異なる。湧出口から出る湯は無色透明なのだ。
しかし、訪れる人や白骨温泉に憧れる多くの人は、白骨温泉=乳白色の湯が湧くと思い込んでいる。
そのために、湯船に溜まった温泉にはなんの間違いもないのだが、お客様へのサービスとして乳白色の入浴剤を入れるという事件が過去に起きた。
お湯を温泉に偽装したわけでもなく、本物の温泉を白く着色したのだが、世間では大騒ぎになったのも事実だ。
これは、「白骨温泉源泉=乳白色の湯」の間違ったイメージが世間に広く浸透したことが生んだ事件といえるだろう。



事実としては、温泉成分の硫化水素が空気に触れて酸化して、粉状硫黄となって白くなる。
さらに温泉中のカルシウム成分もまた湧出後に炭酸カルシウムの微粒子となって白く濁る。
つまり、湧き出した湯が空気に触れることで、徐々に成分の変化によって白くなっていくのが白骨温泉の湯なのだ。
ただし、これらの変化はすべて自然の力で行われるもの。たとえば寒暖差、浴槽の条件などによって濁り具合も変化するし、10数カ所の源泉ごとに微妙に成分が異なるため、変化の度合いもまちまちなのだ。
白骨温泉の白濁りの湯は、決して一定ではない。



さて、読者の中にはこれまでに白濁りの湯に入った経験がある方も多いだろう。
白濁りの多くの湯は酸性が強く、肌に触れるとチクチクしたり、強い刺激がある場合が多い。
ところが、白骨温泉は違う。ここの源泉は弱酸性。とてもマイルドな湯なのだ。だからこそ、長湯をしても、連泊して複数回入浴しても、肌が荒れる心配はほとんどない。
「3日入れば、3年風邪をひかない」と、白骨温泉が古来より伝わっているのは、その入りやすい湯質にも要因があるのだろう。



効能は胃腸病、婦人病、肝臓病、神経症、呼吸疾患、慢性疲労に加えて美肌効果。このあたりもマイルドな湯の証明である。
また、データによれば標高1000mを超える地では、人の脳は違和感を覚え、より以上に養分の摂取を高める働きを行うという。標高が高い白骨温泉では、人体が温泉の養分をより以上に吸収する。それもまた効能が期待できる要因になる。
「3日入れば…」説は、どうやら絵空事ではなさそうだ。



この特徴的な温泉は、飲泉でも効能が認められている。
白骨温泉には2カ所の飲泉所があり、ペットボトルなどに汲んで帰る人の姿を見かける。
持ち帰った人は、白骨温泉で粥を炊くそうだ。これは、白骨温泉でも推奨している使用方法で、「温泉粥コロッケ」や、「温泉粥おやき」は白骨の名物として浸透しつつある。



自然豊かな白骨温泉で、ゆっくり癒やす。できることなら連泊をして、中日には乗鞍岳や上高地に散策にでかける。
おみやげ屋などが並ぶ温泉地とは異なる、自然に直結した温泉の旅ができるだろう。

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長野道松本ICから湯川渡まで国道158号で約50分、湯川渡から約10分。高山ICより国道158号で平湯温泉、安房トンネル経由で湯川渡のルートもある。
< PROFILE >
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』『ぶくぶく自噴泉めぐり 改訂新版』を上梓。旅雑誌などに連載中。
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