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その昔、川沿いや山間、海沿いに自然湧出しており、動物がそこで癒やす姿を見つけて発見されたのが多くの温泉でした。近年はボーリングによって地下の湯を汲み上げている温泉も少なくありません。そんな温泉にも極上の泉質があります。
払沢の滝は冬季凍結することも

秋川渓谷でマス釣りに興じる人も

物産店なども併設

秋川に面した露天風呂

サウナも設置された内湯

秋川渓谷 瀬音の湯
●住所:東京都あきる野市乙津565番地
●泉質:アルカリ性単純硫黄温泉(低張性アルカリ性低温泉、pH10.03
●源泉温度:25.8度
●湧出量:155ℓ/分
●日帰り:10時~21時、おとな900円
TEL:042-595-2614


前回のこのコラムにも登場した温泉達人・故野口悦男さんは、日本の約3300カ所の温泉地を訪ね、そこに湧く湯に入っている。当時、この記録は日本一だった。
その野口さんにいつの日だったか尋ねたことがある。「いつごろ日本の温泉地を完全制覇しますか?」、と。
野口さんの答えは「ムリだろう」だった。
「自然湧出している温泉地にはすでにほとんど行っている。しかし、竹下登首相がふるさと創生事業を1989年に唱え、各市区町村に1億円を交付した頃からさまざまな地に、ボーリングによって掘り起こした日帰り温泉施設が誕生しだした。だから、とても追いつかないんだよ」

筆者がスタッフと共に出版した『ぶくぶく自噴泉めぐり(山と渓谷社)』で取り上げたのは、湯船の底で温泉が湧いているところばかりだ。その場で湧いている温泉だから、それぞれに歴史も古い。そのほとんどは何百年もあるいは千年以上前に発見されたものだ。

しかし、火山帯の多い日本では、ボーリングをすれば温泉に当たる確率が非常に高い。それをポンプアップすれば、立派な温泉地となるのだ。

ボーリングの結果、湯量が豊富であれば源泉かけ流しの湯船も設置できる。また、さまざまな理由で湯量が少なければ、源泉かけ流しは難しくなる(たいていの日帰り入浴施設は大勢の客を対象としているために湯船数が多い。内湯と外湯を設置するケースがほどんどである)。この場合は循環ろ過によって湯をまわして利用することで温泉湯船の数と温泉を維持している。

このような理由によって“温泉通”と呼ばれる人々は、ボーリングの温泉よりも自然湧出の温泉を愛する傾向がある。
こういう筆者も、「ぶくぶく自噴泉」をめぐり、湯底から泡と一緒に湧き上がる温泉に入ったときは、至福の喜びを感じたものだ。

しかし、ボーリングの温泉であっても地球の恩恵には変わりがない。なかには、そんな温泉施設でも極上の泉質にめぐり合うことがある。

秋川渓谷は東京都の西部、あきる野市と離島ではない唯一の東京の“村”である檜原村に位置する渓谷だ。多摩川の最大の支流で秋川渓谷と呼ばれる渓谷は約20kmにも及ぶ。
その源流に近いところには払沢(ほっさわ)の滝、不動の滝、天狗滝などの名瀑と呼べる美しい滝も多い。
また、都心から近いので川を利用したマス釣り場やキャンプ場も点在しており、気軽に川遊びもできる。

その秋川渓谷沿いにあるのが物産販売所やコテージ型の宿泊施設もある温泉施設「秋川渓谷 瀬音の湯」だ。
温泉は地下1500mで湧出する。自然湧出とはいえないが、この湯が素晴らしい。
特徴的なのはpH10.03というpH値である。

温泉旅館などに行くと、浴槽などの壁に掲げられているのが「温泉分析表」だ。ここには湯温や泉質、含有成分などが細かく書かれている。その中の比較的目立つところにpH値が掲載されている。

pH値とは温泉が「酸性」か「アルカリ性」かを示すものだ。たとえばpH6~pH7.5は「中性」で、たとえば水道水、牛乳などがこれに相当する。日本の温泉でもっとも多いのが中性~弱アルカリ性の温泉で、肌への刺激も少ない。
一方、pH6以下は酸性の湯となる。たとえばレモン液はpH2.5だ。これらの温泉は「石けんいらず」などと呼ばれる場合もあり、総じてピリピリする。殺菌効果も期待でき、古い角質を溶かしてくれる湯だ。皮膚病などの治療にも利用されてきたが、肌の弱い人には刺激が大き過ぎる。
pH7.5以上はアルカリ性の湯で、肌触りはぬるぬる、すべすべ。皮脂の汚れや脂分を落としてくれる。
よく耳にする美人の湯、日本三大美人の湯は群馬・川中温泉、和歌山・龍神温泉、島根・湯の川温泉だが、これらはすべて弱アルカリ性の温泉であるのに加え、炭酸水素塩泉であり二酸化炭素泉だ。

さて、瀬音の湯である。前述したようにpH値は「10.03」、強アルカリ性の温泉である。
効能は筋肉もしくは関節の慢性的な痛み、こわばり(関節リウマチ)、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期。さらに、冷え症、末梢循環障害、胃腸機能の低下、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息、肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状、病後回復期、疲労回復、健康増進、自律神経不安定症、不眠症、うつ状態と万能だ。
秋川に面した露天風呂、内湯に入れば、とろりとした感触がなかなかいい。湯温は40~42度に調整されており、外湯はややぬる目だから長湯ができる。
2017年7月1日から10月31日に開催された「温泉総選挙2017夏の陣」において「うる肌部門」で全国第3位になったのもうなずけるのだ。

現代病の症状のほとんどに対応しているのだから、しばし通えば「日帰り湯治」も可能といえるだろう。
しかも、都心から遠くない。周囲はマイナスイオン溢れる美しい渓谷だ。

ちなみにこの地区は江戸時代からスギやヒノキの植林業が盛んだった。江戸の街並みの構築にここの木材が多く使用されたし、戦後の復旧にも役立てられた。
今日では林業そのものが低迷しているが、それでも全国平均より年輪密度が高く、曲げ強度の強い「多摩産材」は非常に評価が高い。
良質の木材が生産される自然の残る東京都西部の温泉は、そこに行くだけでリラックスできるに違いない。
まして、強アルカリ性の特徴的な湯があるのだ。日帰りでおでかけするのに最適な温泉だろう。

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圏央道あきる野ICから檜原街道で武蔵五日市駅経由で約30分、駐車場135台。また、都心から五日市街道を利用しても楽にアクセスできる。
< PROFILE >
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』『ぶくぶく自噴泉めぐり 改訂新版』を上梓。旅雑誌などに連載中。
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